アコースティックギター・メンテナンスガイド

< 中級編 > ☆基本ゆえに奥が深い!弦交換指南

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※メンテナンスの基本は弦交換から!!

『メンテナンスガイド初級編』で述べましたが、錆びてきたり切れてしまったり、以外に消耗の早い弦。マメな交換から楽器のトラブルや不調などを早期に発見でき、なによりも良い音で快適に楽しむために弦交換は必要不可欠です。
基本的には、ユーザー自身で交換する事が多いと思いますが、『巻き方がよくわからない・・・。』と思っている方も多いのではないでしょうか?なかなか教わる機会もなく、人には聞けなかった弦交換の極意を、ここではギタープラネット流の方法で指南しましょう!
ブランドを問わず、Martin、Gibson、Guild、国産ギターメーカー何でもOKです!
やってみると以外と奥が深い弦交換。これをマスターすれば、今日からあなたも弦交換の達人です!!

目次 / 弦を完全に緩める / 弦を外す(切る) / 弦を外す(その2)←推奨 / ニッパーを使用する場合 / 弦を束ねる / 弦を巻きまとめる / 弦をペグから外す / フレットのクリーニング / スチールウールで磨く場合 / マスキングテープを使用 / 金属磨き(スクラッチメンダー) / スクラッチメンダーを使用した磨き方 / スクラッチメンダーを使用した磨き方(その2) / 指板をレモンオイルで仕上げる / オイルの塗り方 / オイルの塗り方(その2) / オイルの拭き取り / ブリッジの磨き

【実践!弦交換】 / ボールエンドを曲げる / ブリッジプレートの構造 / 各弦をピンで固定する / 各弦をピンで固定する(補足) / 6本すべての弦を固定する / 弦のクセを取る / 弦をペグポストに巻く / 弦をペグポストに巻く(その2) / 弦をペグポストに巻く(その3) / ポストの穴に弦を通す / ポストの穴に弦を通す(その2) / ナット側に折り返す / 巻きつけ部に弦を通す / 結び目を締める / 結び目を締める(その2) / 折り返す / チューニングする / 最後に弦を切る / 3~1弦の巻き方 / ポストの穴に通す / 弦を手前に折り返す / ポストの巻きつけ部に弦を通す / リングを作る / 張ってある弦に先端をくぐらせる / ポストに沿って弦を戻す / ゆっくりと弦を引く / 手前に折り返しロックさせる / すべての弦をチューニング / サドル側の確認

弦を完全に緩める

ペグワインダーを使う場合は、ヘッドに傷がつかないように注意してください。
緩める際に1、3弦が切れてしまう事がよくあります。鞭のように勢いよく切れる場合があるので、顔を近づけて作業をしないように気をつけましょう。

弦を外す(切る場合) → (切らずに外す場合)

ナットに近い部分でニッパーを使って弦を切ります。
真ん中辺りで切っても良いのですが、短めに切ったほうがペグから外しやすく、廃棄する際にもかさばりません。
【注意】弦を切る際は、くれぐれも緩んでいることを確認してから行って下さい。

弦を外す(その2) ←推奨

切らないで外す方法もあります。
まず弦を完全に緩めたらエンドピンを外します。エンドピンは弦のテンションで固定されているので、緩めると意外と簡単に抜くことができます。
固着して抜きづらい場合は、弦の根元を持ちエンドピンの方向に押し込むと、ボールエンドがピンから外れ抜きやすくなります。

ニッパーを使用する場合

③の方法で外せない場合は、奥の手としてニッパーを使用して外せますが、楽器を傷つけないように細心の注意をしましょう。
サドル側にクロス等をかぶせ、ピンを軽く挟みます。てこの原理でサドルを支点とし、ゆっくりと押し上げます。(ほんの僅かでも浮き上がればOKです。あとは手で外せます。)

弦を束ねる

エンドピンを抜いたら弦をまとめます。

弦を巻きまとめる

写真のようにペグに近い部分でリング状にまとめます。
このように束ねておくことで、弦をペグから外した際にバラバラにならず、そのまま廃棄できます。

弦をペグから外す

束ねた弦をしっかりと持ち、ヘッドプレートを傷つけないよう丁寧に1本ずつ外していきます。

フレットのクリーニング

弦交換のついでに是非やっておきたいメンテナンスの一つがフレット磨き。
直接指が触れるパーツでもあるので、汗などの油分が付着して以外にも錆びやすいものです。
錆びたフレットは滑りも悪くなり、つややかなトーンが出にくくもなります。フレットのコンディションが悪いと、弾き心地&音質にかかわるので、マメなクリーニングを心がけましょう。
また、減り具合もしっかりチェックしましょう。弦が当たる部分を見て、溝がついてしまっているものは、すり合わせや交換が必要な場合もあります。

それでは具体的に磨き方のコツを説明します。
写真はフレットを磨くための専用ジグです。薄いステンレスなどの金属でできたプレートです。真中にフレットの幅の隙間があり、被せるとちょうどフレットだけが浮き出すようになります。
非常に便利な道具なので、興味がある方は是非探してみてください。
一般でも販売しており、Web通販などで数百円で買えるようです。
(サイズがあるため購入する際は、フレットの幅に合ったものを選びましょう。)

スチールウールで磨く場合

プレートからはみ出さないように丁寧に磨きあげます。
使用するスチールウールはホームセンター等で購入できますが、極細の柔らかいものを選びましょう。
固いものはかえってフレットを傷めたり、フィンガーボードへ傷をつけてしまう恐れがあります。
※プレートの両サイドにマスキングをするとフィンガーボードを保護できます。

マスキングテープを使用

フレットプレートが無い場合は、写真のようにマスキングテープで代用することができます。
フレットのきわに隙間ができないよう、ぴったりと貼ります。
スチールウールを使用する場合は、磨いている時にマスキングが破れてしまう恐れがあるので、2重に貼るなどをして対処します。
磨くときはゴシゴシではなく、やさしく丁寧にがコツです。

金属磨き(スクラッチメンダー)

写真は代表的な楽器専用金属磨き、『FERNANDES 946』。
歯磨き粉のようなペースト状で、少量ずつクロスなどの布になじませて使用します。
フレット磨きにも最適で、金属パーツ全般に使用でき、艶出しや細かな傷を落とすことができるコンパウンドです。
ホームセンターなどで購入できる、金属磨き用のコンパウンドでも良いと思いますが、液体タイプのものが多く、フィンガーボードに浸透しないよう使い方に注意が必要です。
【注意】ゴールドパーツ等、金属メッキのものに使用すると、メッキが落ちてしまいます。

スクラッチメンダーを使用した磨き方

クロスなど、柔らかい布に少量のスクラッチメンダーを取ります。

スクラッチメンダーを使用した磨き方(その2)

やさしくなでるように、中心から端のほうまでしっかり磨きます。
錆やくすみが取れたら、メンダーの付いていないきれいな部分で仕上げの拭きとりをします。
隣のフレットと見比べてみましょう。驚くほど汚れていた事に気づくはずです。
マスキングテープを剥がし、隣のフレットへ・・・。
手間のかかる作業ですが、同じ要領ですべてのフレットを磨きあげましょう。

指板をレモンオイルで仕上げる

フレットを磨き終えたら、仕上げに指板にオイルを塗ります。
オイルの種類はレモン、オレンジ、杉などの天然植物から抽出されるものが多く、木材に優しくなじみます。塗る目的は、乾燥による木材の割れ防止や汚れ落としの効果があります。
【注意】指板やブリッジなど、無塗装部分には特に注意が必要です。冬の乾燥などで適度な水分が失われ、割れてしまうことがあります。

ティッシュペーパーを折りたたんで、適量のオイルをなじませます。
クロス等を使用する場合は、ボディー磨きとの兼用ではなく、新しいものを使用しましょう。

オイルの塗り方

塗り方のコツは、木目に沿って浸みこませるように優しく塗っていきます。
ムラが無いよう、全体的にしっとりと光沢ができる程度に塗り広げます。
【注意】前項で、スチールウールを使ってフレットを磨いた場合は、オイルを塗る前に細かい埃や鉄粉を、毛先の柔らかいハケなどを使って、しっかりと取り除いておきましょう。

オイルの塗り方(その2)

全体的に塗ったら、オイルが多少馴染むまで1~2分程度置きます。

オイルの拭き取り

少しずつ丁寧に磨いていきます。磨く方向は塗る時と違って、木目に対して直角方向から磨いていきます。特にフレット周りには汚れが溜まっているので、しっかりと磨きましょう。

ブリッジの磨き

フィンガーボード同様に塗装がされていないパーツですので、同じ要領で丁寧に磨きます。
この時上側からだけでなく、横の面もしっかり塗りましょう。
※表板に多少のオイルが付着しますが、きれいなティッシュペーパー等を使うと簡単に拭きとれます。

補足:その他にもボディーはもちろん、ヘッドプレート、ネックetc...全体的なクリーニングも忘れずに!
塗装クラックやバインディング、ブリッジの剥がれなど、普段は気付かなくてもこの時に発見してしまう事が多々あります。大事に至る前にチェックできる機会ですので、普段から楽器をきれいにすることを心がけましょう!!
楽しく弾くためには、楽器への愛情は忘れずに!!

いよいよ次項からは、弦を張る手順を指南します!!
最初は難しく見えますが、手順さえ覚えれば誰にでもきれいに巻くことができます。頑張りましょう!!

【実践!弦交換】

ボールエンドを曲げる

ブリッジプレートへの引っ掛かりを良くするため、あらかじめ写真のように少し曲げます。
特に細い弦は強く曲げると折れてしまうので、軽くクセをつける程度でかまいません。

ブリッジプレートの構造

まず、写真をご覧ください。
ブリッジの裏側には写真のような木材の補強板が入っています。
実際にはピンの先端でボールエンドを止めているのではなく、ブリッジプレートに固定されています。
弦のテンションがかかった時にボールエンド側からブリッジピンに力が加わり、固定される仕組みになっています。

各弦をピンで固定する

ブリッジピンの溝が切ってある方を弦側に向け、弦を押し入れていきます。
このとき弦は逆方向に軽く引張りながら、ピンを押し込んでいくとうまくはまります。
しっかりとHOLDされていれば、ギター内部のブリッジプレートでは、写真②のような状態になっているはずです。
HOLDがされていないとチューニング中にピンが抜けてしまいますので、しっかりと固定しましょう。

各弦をピンで固定する(補足)

HOLDされているかの判断は、ある程度外側からでも見極められます。
写真を見て頂くと、ボールエンドからの弦の巻き返し部分(根元の二重になっているところ)が、ピンの隙間から少し見えています。この巻き返しが出ていない場合は、固定できていない可能性があるので、何度か軽く弦を引っ張って確認します。

6本すべての弦を固定する

前項の要領で、各弦をしっかりと固定します。
【要チェック】ビンテージギターなど、長年の使用によってブリッジプレートが摩耗している場合、巻き返し部分がサドルに乗ってしまうことが良くあります。この場合、チューニングが不安定になる上サウンドにも影響が出ますので早期にショップに相談しましょう。簡単な対処方法はありますが、状況次第では要リペアの可能性もあります。

弦のクセを取る

意外に重要な作業の一つです。
一般的に市販されている弦は、巻いてある状態でパッケージングされていますので、そのためにヨレやネジレが生じてしまいます。そのまま張ってしまうと、弦を弾いた際に安定して振動しないため、音がこもったり、ビリつきが生じてしまいます。
根元から指で摘まみ、先端までしっかりとヨレを取りましょう。

弦をペグポストに巻く

弦のヨレを取ったら、片方の手の指をナット上又はペグポスト近くに置き、弦がずれないように押さえます。このとき弦のたるみは作らず、ピンと張った状態で巻きつけます。
【ワンポイント】ストリングポストの穴を写真のような位置に揃えておきます。

弦をペグポストに巻く(その2)

写真の矢印のように、ヘッドの内側から外側へ向かって弦を半周分ほど巻き、しっかりと巻き癖をつけておきます。 (1、2、3弦は左右対称なので向きに注意)

弦をペグポストに巻く(その3)

両手を使い、しっかりとクセをつける。

ポストの穴に弦を通す

尖った先端に気をつけながらペグポストに通します。
【注意】弦の先端は巻きつけ部の上側に出るように。

ポストの穴に弦を通す(その2)

写真のように、巻きつけ部分にほんの少しの隙間を残して、しっかりと引張ります。
【ワンポイント】1つ1つの作業を確実に行うには、弦がたるまないようにしっかりと曲げクセを付けることがポイントです。

ナット側に折り返す

矢印方向に弦を折り曲げます。

巻きつけ部に弦を通す

弦の先端を、ストリングポストの巻きつけ部分に下から通します。
【ワンポイント】⑪で僅かな隙間を作っておかないと、弦を通しづらくなります。

結び目を締める

たるみが出ないよう、しっかりと締める。

結び目を締める(その2)

弦を強く引張り、出来るだけ遊びを作らないように。
【注意】弦を引っ張る際、摩擦で手を切ってしまう事があるので注意しましょう。

折り返す

写真のように折り返すことでロックされ、チューニングした際に緩みにくくなります。

チューニングする

弦のたるみを出さないよう、軽く引張りながら巻いていきます。

最後に弦を切る

切らずに残す方もいますが、万が一怪我をする恐れがあるので、ポストの根元から切りましょう。
ここまでの要領で5弦、4弦も同じ手順で巻いていきます。

3~1弦の巻き方

6弦~4弦と対称になりますので、ポストの内側から外側へ巻きつけます。

ポストの穴に通す

弦を手前に折り返す

ポストの巻きつけ部に弦を通す

これまでと同じように、ポストの巻きつけ部分の下から上へ弦を通します。
ただ、弦が細くなるにつれこの工程がやりづらくなってきます。
【注目ワンポイント】次項からそんな時の裏ワザをご紹介します。

リングを作る

ストリングポストを中心として、写真のようにリングを作ります。
この形を崩さずにキープしたまま、次の工程へ。

張ってある弦に先端をくぐらせる

リングの形を崩さずにキープしたまま、写真のように、ヘッド上の張っている弦の下に先端をくぐらせる。

ポストに沿って弦を戻す

弦の先端をつまんで、ストリングポストに沿わせるように写真の矢印の方向に戻していきます。
【注意】このときもリングの形は崩さずに!

ゆっくりと弦を引く

ゆっくり弦を引きながら、リングを縮めていきます。
リングが最後まで縮まる時、写真のような形になるはずです。
結果22番の工程と同じ形になります。

手前に折り返しロックさせる

すべての弦をチューニング

サドル側の確認

最後にサドル側の弦間をチェックします。
均一になっていれば問題はありません。
しばらく弾いているとサドルに溝がついてしまう場合がありますが、ピッチが不安定になったり、音が詰まったりする原因にもなります。ペーパーヤスリなどで磨いて落としましょう。

『おつかれさまでした!!』

これできれいに巻くことができたはずです。
一つ一つの工程が大切ですので、焦らずに確実に作業しましょう。
慣れれば5分間程度でできるようになります。
とにかく繰り返し練習することが習得術の基本です。
そのためにはマメに弦を交換し、良いコンディション&良い音をキープしましょう!

※あると便利なチューニングメーター!!

マイクで音を感知する卓上式は定番ですが、最近ではクリップ式のチューナーがお手軽で人気です。
ギターのヘッドに装着し、弦の振動を感知してチューニングします。
周りの音に影響されずに使用できるので、スタジオやライブ等でも重宝します。
暗いところでも安心のバックライト機能付がオススメ!!

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